千秋楽に、乾杯。
なんだかもう、始まる前から寂しい気持ちでいっぱいでした。
よくやったよなあ、本当に。普通のミュージカルの何倍も大変な内容。それをよく最後まで我々の目にはっきり見える程の大きなケガもなくこなしたものです。
もちろん、毎日の公演・・・それこそ昼夜公演の日は演じている間だけでハワイに着けてしまう程の長時間のハードな内容が続くわけですから、身体に無理がたまっていないわけはなく。事実、この数日の光ちゃんの頬のこけ方たるやすさまじいものがありました。
だけど、とても幸福そうで。
もうこれだけは誰が観たってこの世で一番幸福だ、って顔して踊ってるんですからファンとしてはしっかり目を開けて見守る以外何ができましょうや。
オープニング。あのピアノ曲が流れる中、一条の光を浴びる後ろ姿。
くるりと振り向いた光ちゃんの顔はそれはもう晴れがましさと充足感に満ちておりました。
台詞のひとつひとつを惜しむかのようにゆっくりと唇に載せて。
月刊ミュージカルの評でもありましたけれども、最初のフライング。あの時点で我々は日常からいともたやすく別世界に連れて行かれるわけですよ。光ちゃんが抱き上げたのは子供だけではなくて、劇場の観客全員なんだなあ、と思ったりして。
そうして、あまりにも素早い衣装替えと共に間髪入れず再び飛ぶ光ちゃん。この時点で頭の中は完全に日常から遮断されてしまうんですよね。
本人がTVぴあでも語っていた通り、フライング自体は思い切り身体を宙に放り投げられてその遠心力でぐるぐると回っているわけで着地は誰かに受け止めてもらわなくては止まることすらできないという状態なはずなのに。飛び回るその姿につい、光ちゃんが自由自在思うがままに飛び回っているような錯覚すら覚えてしまいます。
この人が空が飛べることは当たり前であるような、そんな感じ。
再び光ちゃんが現れる白の上下でのナンバー。
去年12月の途中でこのダンスは振りが一部省略されました。女性ダンサーを振り回すところ、腕の力ひとつでショートカットの女性を床の上でぐるぐるっと回すところはあまりにも過酷な場面が連続する舞台故でしょうか、省略されるようになっておりました。
正月明けの1/3にこの部分が復活した時に私は「だけど、その内なくなるんだろうなあ」と思ったものです。
本日千秋楽まで、この振りは二度と省略されることはありませんでした。これは彼の意地でしょうか?ダンスに関しては全くの素人ですのでわかりませんが、恐らく女性をリフトしてぐるぐる回るそれよりも身体にかかる負担は大きいような気がするのですが。
光ちゃんのプライドは結局、千秋楽までこの振りをカットすることなく継続させたのでした。
いや、すごい人です。
だから、拍手。
後ろ姿で架空の観客たちに三方礼を行う光ちゃんに拍手。
舞台上では今さんが「本当に本当に本当に、千秋楽おめでとう!」と言葉を重ね、二ヶ月に及ぶロングランの最後を祝い、キャストの誰もがそれに唱和する。
この人たちは二ヶ月、このハードな舞台を共に分かち合ってきた戦友なんだなあ、と心から思う。
で、ここから始まる光ちゃんの歌。
いやあ、私はですね。12月の休演日明けからいきなりこの部分を含めた何カ所かを生歌にしてきたこと自体、ものすごく驚いたわけですよ。
正直言って「SHOCK」はある意味異常なミュージカル(いや、SHOW劇だからミュージカルとは違うのか)ですから。普通の舞台の8倍くらいは主役が動いて動いて動き続けてる。観客の前から主役がいなくなる間がほとんどない。見えない間はどう考えたって舞台裏で着替えながら走りながら、をやってるのに違いないという作品ですので歌は全部テープで結構、と思っておりました。
人間の能力値を遙かに越えることだと思いますので。あれだけ動きながら歌うのは。
ところが途中から、あえてできるところは全て生歌に変えてきた。芝居や動きの段取りに余裕が出てきた辺りで更に自分に課題を与えたわけですね。
ぶっちゃけた話、最初の頃はこの生歌のお時間が来る度に手に汗握っておりました(笑)が、恐ろしいことにこの人、ある時期からいきなり歌が変わりました。高音の出し方を体得したのか実に綺麗に声が前に伸びるようになっていい歌を歌うようになりましたねえ。
中でも「千秋楽にかんぱーい」の後に来る歌は最初からそこそこの出来ではありましたが、今じゃもう声の伸びも何もかもが全然いい。
元々いい声をしてるんだからもっとしっかり歌え、と思っていたのでこの辺りは念願叶って感涙です。
「幻炎」については既に、気合いの入り方が違うので。
いい時の「幻炎」は光ちゃんの背中にめらめらと燃え立つような何かが見える気がします。今日はもうすごかった。
一番近いのは仏像が背負ってるあれですね。ああいう感じ。この際ですから神々しいとまで言ってしまいましょう。イメージとしては静かなる闘神。あの短い一曲の中に多くのドラマを感じてしまう。
ヒガシでしたか、「MILLENNIUM SHOCK」で光ちゃんが「幻炎」をやるに当たって
「踊りだけで何かを表現できるということは素晴らしい」
と言ったのは。けだし名言ですね。
確かに光ちゃんの「幻炎」には物語が宿っている。
続く「Hey!みんな元気かい?」の口上は、初日を観た日には「どうしたらいいんだろう?」と本気で心配したんですが、まあ今の光ちゃんの技術力の限界までよくなりました。
今日は町田の小芝居(笑)に一瞬口元がひくひくと笑いかけたのをよくぞ持ち直した!顔を前に向けた時にはすっかり表情を作っておりました。つーか、町田やりすぎ(笑)面白いから私はすきだけど。
殺陣もJr.を含めて上達しましたよねえ。光ちゃんは見栄の切り方がとにかく一流ですので間の型が多少流れていても気にならない、という強みがあります。
身のこなしが軽いですからね、観ていて小気味いいんですよ。Jr.の渡邊くん並に、とは言いませんが私は結構光ちゃんの殺陣はすきだったりします。あとは腰だよな。
さて劇中劇。
「ハムレット」は実に実によかったです。
去年「ハムレット」づいていた私は光ちゃんを含めて4人のハムレットを観ているんですが、私は彼のハムレットはとてもすきですねえ。全幕を演じたならばまた違う解釈と演じ方があるのでしょうが、狂気と正気の狭間で苦悩する光一ハムレットは、その年齢に見合った若さがありました。
若さ故の懊悩。己の未熟さに見合った苦悩ぶりが観ているこちらに歯がゆさを覚えさせました。
シェイクスピアの解釈はひとつではないのでそれぞれが「ハムレット像lを抱いていていいものだと思いますが、ちょうど光ちゃんとそう年齢が変わるわけではない(はずの)ハムレット王子はむしろこうあるべきなのかもしれないな、と感じたりするわけですよ。まあ、ちょっと吠えすぎてるところはあると思いますがいつか全編観てみたいなあ。
何よりも、似合うんだよなあ。ハムレット。
似合う・・・これってかなり重要なポイントだと思います。
で、それより更に好きなのが「白鯨」
「ハムレット」と「白鯨」では完全に演じ方が違うので。光ちゃんの偉そうなところがめちゃめちゃツボです。
今回の「SHOCK」は新作部分があんまりないので特に光ちゃんが演じるのを初めて観た「白鯨」は新鮮で楽しい。
「白鯨」はなんと言ってもグレ子がいてくれたおかげで多分他人様の倍以上は楽しい時間を過ごしました。ありがとう、グレ子隊の皆様。
とにかく「多分」「さあ、そのもりを!」「切れーーーー、ロープを切れーーーーっ!」を光ちゃんが言ってくれるのをわくわくしながら待っておりました。
あとは「潮風」(「星も見えない夜」歌詞違いバージョン・・・勝手に命名)ですな。もう、この曲が、光ちゃんが生歌になってからの一番最初の握り拳ポイントでした。
最近は本当に素敵です。ああ、手に汗握っていた私はいずこへ?うっとり聴いております。
はじめは首でも絞められてるんじゃないのか?って勢いの表情でしたけど、最近は高音を楽に出すようになったせいで安心してうっとりできます。
光ちゃんにはもっと歌わせたいですねえ。それこそいじめになる程に。元々の声質はいいものを持っているのだからもっと歌うべきだ。と私は思います。
2幕「MY TRUTH」は唯一(?)の新作部分。
これはもう、手放しでいいです。帝劇の奥行きのある舞台を十二分に生かした群舞と、それを従える光ちゃんの放射状の展開がすごくすき。この曲の時の光ちゃんの気合いはすごいものがあるのでそれを観るのもすきでした。
残念なのは帝劇のトイレ事情のためにこの曲の途中で席に戻ってくる人がかなりの数いること。
私の視界を遮るなーーーーーーっ!と叫びそうになったことしばしば。
今日は平気でしたけど(^^;;
衣装がまたシンプルなんですが、ものすごくこの曲と合ってるんですよねえ。うっとり。
光ちゃんは日本一膨らみ袖の白ブラウスが似合う人だと思います。それにまた黒のサッシュベルトっすよ。ああ、ほんと冗談みたいなのに恐いくらいに似合う。生まれた時からそれ着てたと言われても私は信じられるわよ。
光ちゃんのダンスは柔らかくて、止めと動作のめりはりがきっちりしているので非常に美しく映ります。
SHOCKが早回しSHOCKだった時にものすごい速さのダンスなのに、光ちゃんの動きだけがなぜかゆっくりとして見えたことを思い出す。同じ振りだし、省略なんてひとつもしてないのに。
「A列車で行こう」は「MILLENNIUM SHOCK」からのナンバーですが、アメリカツアー(てか、ブロードウェイのエージェントに招待されたのに着いた途端いきなりツアーに出かけるのはなぜなんだろうか)の移動の日々へとシフトしたのはよい感じでした。
あれを日本でござい、とやられてもぴんとこなかったし。
ところで皆さんはご存じだったでしょうか?「A列車」最後のクラシックカーのシーン。あの車のナンバープレートは「2002」フロントについてるシンボルマークは「J's」になっていることを。気付いたのは今年に入ってからだったので、果たして去年の内は「2001」となっていたのかどうかは永遠に不明のままですが。
気付いた時には「こんなところまで・・・」と妙に感心したものです。
で、最後の最後のねじまきネタはボーイ・キュートの「Let's
Dance!」のかけ声いっぱつ、舞台の上の人々全員で武富士のCMポーズ(と思ったんだが)
最後は全員でびしっとね。
なんか微笑ましかったのと、予想だにしていなかったことだったんでびっくり&大拍手。
ありがとう、樹里さん。ありがとう、今さん。
「Hello,Broadway」はもう随分と長いことやってますよねえ。「MASK」の時からだから足かけ四年かあ。
今回はあの赤ちゃんダンスが加わったのが目新しいところか。Jr.がおしゃぶりくわえてるのを観る度に、「SHOCK」初日、Pちゃんとビッグカメラの辺りを歩いていたらおしゃぶりくわえた二十歳くらいの男の人がふっつーに歩いているのを目撃したことを思い出します。あれはなんだったんだろうか。
この辺りは光ちゃん笑顔全開。踊るのが楽しくてならない、って顔してます。
この笑顔。だからこそ、次にくる「FIGHT」・・・というより「ウエストサイド」と言った方が友人達の間では通りがいいんですけど(^^;;
の、厳しい顔が余計に印象的になる。
「FIGHT」で出て来る時の光ちゃんって、なぜか歩き始めはペンギンのごとくちょこちょこちょっと小走りで、中央辺りにたどり着くとすたすたと歩きだすんですよね。
今日はちょこっと余裕ありの飛び出しでした(笑)
ぐるぐる回るサルティンバンコ。これも日によって本当にぐるんぐるんの日と、控えめな日とがあるんですが、今日は「えーい千秋楽だー」のぐるんぐるん。これって思い切り回した方がいっそ目が回らずに済むんだろうか。
結局最後の最後までぐるぐるされて着地しても微動だにしない光一さん。あなたすごすぎです。
人の三半規管の限界を超えていると思われるあのアクション、光ちゃんが足をしっかり地面につけて何事もなかったかのように次の動作に入れるのは何故なんだろうか、と毎回思わずにいられない。
「FIGHT」のシーンは毎年いわくがつきまとうので、いつも固唾を呑んで見守ってます。
今日は楽しげにすらりと終えました。
そして「NIGHT IN N.Y」
はじめてこれが生歌になった時、あれだけの激しい動きの後で息も切らさずになぜ歌えるんだろうか、と真剣に思ったものです。
今日もいい感じで歌い上げておりました。拍手。大きく拍手。
この曲に対する表情の付け方がとてもすきです。小さくガッツポーズして去っていく後ろ姿。いつだったからか大きな拍手が自然に起こるようになりはじめた時、ぐっと握りしめる拳に本物の喜びがこもるようになったことを思い出す。
なんだか今日はとても感傷的です。
さて、初日後の楽屋。
どうやらここでMAはフリー演技のお許しをもらったらしく。
MA暴走(笑)町田バクハツ。なぜかこの「SHOCK」では町田はすっかりオカマキャラを定着させておりまして、人々の密かなる注目の的と化しておりました。
そりゃもうあっきーだって「なんでオカマキャラなんだよ?」と訊きもするわな。
そしてひとしきりの笑いの後で歌い始めたあっきーソロの「初日の歌」は、いきなりラップ調。
爆笑の客席はそれから歌に合わせて手拍子をはじめる。
これは、一昨年から通じて本当にはじめてのことでした。ステージ上の出演者たちの顔が(特にあっきーの顔が)ぱっと輝いたことが忘れられません。そのままの勢いで光ちゃんソロの部分も続く手拍子。
なんだかとっても嬉しそうな幸福な楽屋裏シーン。
ああ、ミュージカルっていいなあ。なんて思ってしまったりして。
今日の光ちゃんの台詞「でもこの成功はおれひとりのものではありません。カンパニーみんなのおかげなんです」が、とても染みるように聞こえたのもこのおかげ。
出てきたサキホさんもいつもより笑顔。
あっきーとの友情ダンスの前に光ちゃんからそのお礼でしょうか。
「まさか記者会見でラップ歌うとは思わなかったよ。でもまあ、記者の皆さん(観客)も喜んでいたみたいだし。いいか」
と。
あっきーにっこり。
この舞台を通して最も強く感じたのは光ちゃんのMA・・・中でもとりわけあっきーに寄せる盤石の信頼。
あっきーにはそれまでのつきあいの長さや深さももちろんですが「SHOCK」を通してより一層の揺るぎない信頼をおいたようで。
あっきーも、恐らくそのことは強い理解をもっているのでしょうね。目の前で確実に培われていく信頼関係というものを日々感じておりました。
なんだか涙が出る思いですよ。
そういう人に出会えるのは、ましてや光ちゃんと同業者でそういう人に会えるのはただそれだけで財産だと思いますから。
友人は人生における道標。光ちゃん、あっきーに会えてよかったね。
今日もツバサはバック転。すっかりできるようになったらしい。そして「ロンダート」と「バック転」と「後転」でラストを締めておりました。まあ、成長したわな。
で、その後の「Broadwayメドレー」は楽しくなごやかに、光ちゃんの鮮やかなステッキ裁きをにこにこしながら観ておりました。ら。
最後の最後で光ちゃんステッキを取り落とす。
あ。
と、思ったら次の瞬間あっきーもステッキを取りこぼす。
あ。
・・・光ちゃんはともかく、あっきーのあれはわざとだったのか単に偶然だったのか、はわかりませんがなんかにっこり。
まあ、こういうのもありか。
四人してきゃっきゃとはけていきました。ああ、これも見納めか。
クライマックスつつがなく。
もう謎解きの台詞回しに不安の影は見あたらない。人とはかくも成長する生き物か、とこの部分にさしかかると最近必ず思い至る。
最後のゴスペルコーラスは涙。
この曲はいいですねえ。ぐっとくる。
そしてステージ上の人たちがみんないい顔してるんだよなあ。光ちゃんもきらきらりん。
で「Let's go to TOKYO」なわけですよ。
卑怯としか言いようがない、この位置にこの曲。一番眩しいライトで、一番眩しい白い服を着た光ちゃんがそれはそれは楽しそうに踊るんですよね。
目が眩む光景だ。
大階段の最上段に姿を現しただけで、大拍手。
気分は既にスタンディングオベーション。まだまだ我慢。
普段でさえこの曲流れると涙ぐむくらいなのに、こんな日だけに気持ちは余計高まるというものです。
ついにこの曲まで来ちゃったなあ、という感じ。
無事にここまで来れてよかったなあ。ああ、でもまだこの後に難易度Cなのが控えてるからまだ気を抜くな、みたいな混然とした気持ちでした。
「-so young blues-」はただ見入る。
この曲は、最初に振り付けが決まった段階からおそらくはこの帝劇の舞台を射程に入れていたんだろうなあ、と思います。誰もがあの名作プロモの再現を望んでいるので、これはなるべく忠実に再現。実に贅沢ですよねえ。
それから「愛のかたまり」
この振り付けはここ数年の中でも私の中では確実にベスト3に入る出来でございます。
段々と増えてくるバック。特に光ちゃんとMAが作る綺麗なダンスの四角形がとてもすき。歌だけを考えればKinKiふたりで歌った方がいいですが、ビジュアル面なら私は断然この帝劇版がすきです。
「アンダルシア」はもう、オハコな光ちゃんですが私はあの冒頭の型袖マント姿がめっちゃツボ。
あのしなやかな黒の輝きがいい。
光ちゃんは日常には収まらないような服程よく似合う。
思い切り作りこんだものがはまる人なんだよなあ。少なくともあのゴスペルコーラスのコメントが微妙なジャケットよりはアンダルシアの黒マントの方がはるかに似合っている。
安心して観ていられるんですが、最後の台宙の時は流石に息を呑みました。毎回呑んでます。
結局一度としてこの台宙をお休みするような事態にはならなくて本当によかったです。だけど命がけでやってくれてる分、このシーンは確かにものすごくかっこいい。
「ボクの背中には羽根がある」はやはり、あの命綱なしのフライングでしょう。
最近腕を羽ばたかせて、壁に近づきすぎた場合の方向変えてたりするんですが、その度に息を呑む。
それにしてもあれは絶景です。
観たことのない風景。つっちーが涙したのもわかる気がします。
なんかですね、人の限界は意志の力でとっぱらえるものだって気になるんですよ。
空だって飛べる。それは夢じゃない。
そんな気がしてしまう。私はつっちーが見終えて健さんに「僕たちもがんばりましょう」と言いたくなったその気持ち、わかりますよ。
そしてごあいさつ。
舞台が終わることを心から惜しむように。ひとことひとことをゆっくりとしゃべる光ちゃん。
まあ、その、聞き捨てならないことも言ってましたが。
「今回の舞台、観れなかった人がたくさんいたということで」
あの・・・それはまさか・・・・
「その結果が明日の新聞に載ります」
あの・・・もしかして・・・・
お願い。せめて一日、千秋楽の余韻にひたらせて(涙)
おかしかったのが。この光ちゃんの明らかに「再演します」と言っている言葉に客席がどよめいたこと。
流石に千秋楽のチケを手に入れてる人たちというのはかなーり頑張った人たちが数多くいるわけで、その人たちのため息というか、明日から財政建て直しにとりかかる予定の人たちのため息だったのではないかと。それとも苦しかったチケ取り物語が実はエンドレスだったことを知った放心のため息だったのかと。
ですが、光ちゃんはそのようなことは歯牙にもかけず。
心をこめたごあいさつの後、はにかむようにこう言いました。
「これで締めたら最後の曲が始まっちゃう」
劇場内の誰よりもこの舞台が終わることを名残惜しんでいる人の心からの言葉でした。
翼と顔を合わせて微笑する。
本当に、舞台がすきなんだねえ。
なんだか後のことを考えるとものすごく大変そうだけど、君が大好きな舞台をやりたいのなら、いくらでも通うさ。と改めて思う。
そして最後。
ひとりひとりに大きな拍手。一番大きな拍手は光ちゃんに。
金色の衣装で現れた光ちゃんに1階総立ち。
光ちゃんは客席の後方に向かって叫びました。
「おいで、剛」
現れたのは剛君。一緒に報道のみなさんへのサービスで「情熱」歌ってから「千秋楽おめでとうございます」と言って足早に去っていきました。さんきゅ。
あの一言で光ちゃんは舞台の堂本光一さんからKinKiKidsの堂本光一さんへ戻る扉の鍵を手にしたのだな、と思ったりして。
曲が終わって三方礼、大きな拍手は鳴り止まず。幕が降りてもずっと拍手は続き、アンコールを求める。
流れはじめたのはあの「SHOCK」のオープニングの柔らかなピアノの旋律。
私はただ涙。涙。
理由より先に涙腺決壊。
たったひとりで舞台に現れた光ちゃんに再び大きな拍手。
去年は四人で現れた千秋楽。今年はたったひとりで、満足と充足感でいっぱいの笑顔でアンコールに応える。
再び幕。
まだまだ拍手は鳴り止まず。
そして、本当の本当の最後。
緞帳が上がった時、ステージにいたのは、光ちゃんを中心にした、キャスト全員。
いつもはセットの上の方で礼をするFIVEも。既に私服に着替えかけていたキャストの人も。全員。
前には出ず、舞台の奥で光ちゃんはマイクを通さずに客席に向かって叫びました。
「どうもありがとうございました!」
それが最後。
実にいい千秋楽でした。
今でも思い出すと涙が出る。
とりあえず、明日からのことは考えるまい。
千秋楽おめでとう。心から、おめでとう。 |