＝＝１幕＝＝

コウイチは亡き兄・ヒカルの意志を受け継ぎ、カンパニーを支える花形スター。
今日も、元義姉・ミー、ミーの再婚相手であるジュン、ジュンの連れ子であるシュンスケ、ミーとヒカルの子であるカズ、そしてミーの実の弟であるトウマや、カンパニーのアキヤマ達と旅から旅への毎日を過ごしていた。
観客の子供と一緒に飛んでいる時の落下事故や、コウイチのフライングの失敗など、不可解な事件は続くものの万事こともなしの毎日。
ある日、コウイチ達は単調な旅の毎日に変化をつけようと、バイクで次の公演地・京都までツーリングの計画をたてる。気が進まないといった様子のトウマを半ば無理矢理連れ出したものの、コウイチは後ろに乗せたトウマとバイクごと吊り橋の下へ落下してしまう。
大怪我を負うトウマ。カンパニーの仲間からのそしりをうけつつも、コウイチは「何があってもショーの幕だけは開けなければ」と強引にジャパネスクショーの幕を開けた。

ショーは大成功。
どころか、コウイチたちはNYのエージェントから、招聘の依頼まで受ける。元義姉・ミーは、愛する夫・ヒカルを失った街であるNYへ行くことをよしとはしなかったが、コウイチは、亡き兄の遺志を受け継ぐため、そして誰よりもケガを負ったトウマのために、渡米を決意する。
だが、コウイチの心にはいつもトウマへの贖罪の気持ちが揺らめいていた。
今日も、まるで「白鯨」の物語そのものの夢に、コウイチはうなされる。
それぞれの心にわだかまりを残したまま、舞台はNYへと移った。

＝＝２幕＝＝

13年前、NY。
ヒカルのミュージカルは無事初日の幕を開け、観客の評判も上々。だが、ジュンの持ってきた新聞の劇評は散々なものだった。
その責任を感じたジュンは、自ら果てようとする、が、いつのまにか陰謀に捕らわれたヒカルは逆にその命を落とすことになった。周囲には自殺だと思われるような、そんな不可解な死。
ヒカルは弟のコウイチに怨みを晴らして欲しい、と願う。

いよいよ、到着したNY。結局、コウイチが心配でついてきた義姉のミー、ジュン。カンパニー全員が揃っての公演は、各国の様子を次々に演じていくさながら万国博のようなミュージカルだった。
場内は絶賛の嵐に包まれ、駆けつけたプレス達からもコウイチは褒めそやされる。
ところが、そんな祝いの席に、劇中歌の著作権諸事を訴える連中が現れた。コウイチの機転でことなきを得たものの、現場は一瞬不穏な空気に包まれたのだった。

そんな折り、アキヤマが突然「トウマの様子が心配だから」と日本に帰国すると言い出す。コウイチは、トウマをそうやって甘やかすことよりも彼の戻ってくるべき場所を守ってやることの方が大切ではないか、とアキヤマに諭す。話の食い違う二人。そんな時、シュンが血相を変えて飛び込んでくる。
トウマが病院から脱そうして、行方知れずだと。
アキヤマ達は心配して、コウイチに日本へ帰るよう促すが、コウイチはきかない。三人は決裂する。

日本。
トウマはひとり岸壁に立っていた。
誰もが自分を置いていく。とりわけコウイチはトウマの一番の望みだったNYでの成功を手に入れた。嫉妬からコウイチへの感情を爆発させるトウマ。
だが、夢の中に現れたコウイチの導きにより、彼は自分が実はもう歩けるようになっていることを知るのだった。

トウマは、夢の中のコウイチの呼びかけに答えて日本へと渡る。

トウマが帰ってきた。
喜びにあふれるカンパニーは、再び前進をはじめる。そんな時、コウイチがみんなを楽屋に呼び出した。

これまで起きていた不可解な事件、その謎が解けたというのである。

コウイチによれば、これまでの事件の全ての黒幕はジュン。
始まりはヒカルの死。ジュンによって、操作された劇評を信じた兄はその陰謀によって死に追いやられた。
さらに、子供とコウイチの落下事故。これは、ロープに切れ目がつけられており、最初から切れるように仕組まれていたのである。
そして、バイクの落下事故は、先回りしたジュンがなにがしかの細工を橋にしかけていたものであった。

正体を現すジュンに、何も知らなかったシュンは愕然とする。
一緒にショービズの夢を追いかけていたはずのヒカルにばかり当たるスポットライト。いつのまにか置き去りにされた自分に気づきいたたまれなくなったジュンは、息子のシュンに果たせなかった夢を託すため、邪魔なヒカル、さらにはコウイチをも亡きものにしようとしたのだった。

悪事が露見した今、ジュンは潔く死を選ぼうと見せかけ、シュンひとりを連れて逃げ出そうとするのだった。息子にこちらに来い、と呼びかけるジュン。
シュンは実の母のように愛してくれたミーのことを思い、父の元に行く勇気が持てない。が、やがて決心し、高所を移動しようとして落下してしまう。それを助けようとして間に合わなかったコウイチは、ジュンに拳銃で狙い撃ちされてしまった。
やぶれかぶれになったジュンは、ミーとの子、カズを道連れにしようとして拳銃を撃つ。が、凶弾は息子をかばおうとしたミーに当たってしまう。カズに、母親の死の責を負ったまま生きろと呪いの言葉を吐いていずこへと消えるジュン。

一同に絶望が訪れた。
だが、亡き兄ヒカルの手によりなんとかコウイチとシュンだけは間一髪のところで救われていたのだ。仲間に責められるシュンをかばうコウイチ。その光景を虫の息で見たミーは心からの礼をコウイチに伝え、息絶える。
ようやく、ミーは愛した夫の元へと旅立つことができたのだった。

悲しみを乗り越え、カンパニーは今日も舞台に立つ。
トウマ、そしてシュンスケとカズの兄弟は、日本に帰るカンパニーを離れてNYに残る決意を固める。
そうしてコウイチ達は、凱旋を果たした日本で今日も舞い踊るのだった。