■3/2(thr)■
本日が私的翼初日。 そして、本日が恐らく今回の公演中最良席。
座った瞬間からなんかいいところに旅だってた。背中に羽が生えてたよ、多分。
OVERTUREの軽快なメロディーの中、座長登場。
肉眼で笑顔が確認できます。
てか、なんでアナタ「素」で紗がかかってますカ?そこだけなんかヴェールがかかっているように見えるよ!
そうだった。思い出した。
前方数メートル先に立つ座長様は生まれながらにセルフヴェールお持ちなんだった。
近ければ近いほど、そこにいるという実感が湧かない希有な存在。ダンスが実に美しいです。
伸ばした指先から世界が広がっていく。止まる、動く、のめりはり。腕の動きのしなやかさ。指先の表情。
うっとりです。
頭上を座長さんが飛びます。
なんかこう、普段じゃ考えたこともない絶風景だよ。
このフライング姿勢の美しさよ。もちろんワイヤーが吊っているのはわかっているのに、この人は本当に空を飛べるんじゃないかと思う。
自然とフライングの時にぐっと拳を握りしめている私がいます。ちゃんと無事に空を舞って、ケガなく地上に戻ってこれますように、と。
今日は私が見た限りでは、フライングは全て何事もなく無事に終わりました。よかった。ほっとした。なんというかですね。
よいお席が巡ってくるということはSHOCKのチケ取りの場合二の次です。
正直、あの殺伐とした限界状態の中で「こんな席がいい」「あんな席がいい」なんて、そんな贅沢言ってられません。
取れればラッキー。そして座った席ごとにお楽しみは用意してくれているし、どこにいたからといって満足できずに帰ることはないのですが。さすがにあれだ。
風景違うなあ、と思う場所はあるよなあ。殺陣が。
一幕の大詰め、JAPANESQUEがとにかく素晴らしかった。
めくるめく時間の流れ、二人の武将の立ち位置、戦場の移動、それらが淀みなく流れるように目の前に展開されていくのですよ。
座った位置が前方のど真ん中だったので、舞台端や、普段見えてしまうものが一切見えません。
それがこんなすごい視覚効果をもたらすものだったのかと思い知りました。
コウイチ軍が舞台上に展開。
横一直線に並び、コウイチだけが一歩前に出ます。
セリがその状態でぐっと持ち上がると風景の中にいるのはコウイチ軍のみ、それが、後方に「翼」旗がちらりと見えたかと思うとコウイチ軍を乗せたセリが下がっていく。同時にせり上がってくるツバサ軍。
気配に振り返ればそこに、敵の軍勢が!
本当に突然視界の中に現れる大群に息を飲みます。
す、すごい。
これはこんなすごいものだったのか。
回転する舞台に乗ったまま戦場が移動していきます。
同じ戦場の異なる場所にあるコウイチとツバサ。それぞれ目の前の敵を倒しながら互いの宿敵を捜し求め、ついに出会い、その瞬間間髪を入れずに刀で切り結ぶ。
す、すごい。すごいよ。
舞台の回転で同じ時間の異なる場所が同時に展開し、コウイチとツバサの斬り合いでまたひとつに統合された。
なんだこのかっこよさは。
すっかり劇中劇だということを忘れてのめりこんで観てしまいました。
私の中では既にこの場面は大体のストーリーができあがってるので、勝手にそれにあてはめて(笑)
圧巻。
流れの美しさとかそういうものだけでなく、あの中にちゃんと物語が組み込まれている。
すごいなあ、Endless SHOCK。
呼吸することも瞬きすることも忘れて見入ってしまったよ。
むしろ、アキヤマが真剣を渡した瞬間我にかえったコウイチ同様、あの時まで完全に入ってましたよ。
感動しました。
殺陣の連続で物語を伝えることってできるんだね。感動と言えばラダーフライングです。
舞台から二階席の方に向かって延びている一本のレール。
ラダーフライングや、Jungleでのフライングはこのレールでワイヤーの滑車が移動し、より客席の奥に向かって光ちゃんが飛べるような仕掛けになっているのですが。
Jungleは、スモークで完全に舞台上で何が起きてるかわからない状態の白い闇からいきなりコウイチが緑の蔦ロープを掴んで思いきり飛びだしてくるわけですよ。
し、知ってたのにびっくりした。全部もってかれた。
うっわーーーー。
と口開けながら軽々と飛ぶ光ちゃんに見とれる。
余計なものが見えないって素敵。
そしてラダーですよ、ラダー。
ほとんど梯子に激突するような勢いで取りついているんですね。そして、客席側のはしごから舞台側の梯子に取りつく前にワイヤー吊ってる滑車が先に舞台側に移動していって、それを待ってから光ちゃんは飛ぶわけですよ。
こんなことやってたのか。
あの短い時間に。
飛ぶ方向を決めるのは光ちゃん自身で、あの細いワイヤー一本に身体を全部預けて飛ぶか。
命綱のワイヤーをフックにかけるのは、MA米花くん。自分で確認することもなく、肩をぽんと叩かれてそのタイミングでためらいなく飛びだしていけるその輝くような信頼にじん、と感じ入る。
梯子の間隔は横がちょうどセンターブロック分、縦には大体C列から中列くらいまで分か。
さほど広いわけじゃないです。
梯子から梯子への移動はほとんど激突に近い。Gロケのお姉さんの手を借りて取りつくのもかなり勢いがついてるように見えます。
なんというかこれ、思っていたよりずっとずっととんでもないものだぞ、と無事に舞台の上の梯子上に戻った時心から安堵しながら思ったのでした。
ところでこのラダーフライングですが。
下で観ているとですね、ちょうど舞台から光ちゃんに向かってライトが当てられています。すると、ラメが入った和服の黒い薄い袖が透けてきらきらとひかるんですね。ふわりと両腕を広げる様子はとても綺麗でした。
さらに。
その布越しに光ちゃんの腕が白く透けて見えてですねえ……正直、思いのほか大興奮でした。袖の縫い目が中央に来ているところ(当たり前なんだけども)も予想外に大興奮だった。あの線がたまらなく大興奮ポイントで……すみませんごめんなさいほんとにもうしわけありませ。
リボンも綺麗だった。
布をさばくその風がふわりと頬にくる。うっとりだ。
何回観てもあの炎の縦羽蝶が舞う姿は美しい。
最初のフライングもすき。ホントに自然とにっこりしてしまうくらいすき。さて、ちょっと今日は観るもの全てが美しすぎて気を抜くとすぐいいところに飛んでいってしまう私ですが。
ツバサの話をしておきましょう。
やはり足が気になるのか、特にタップやHORIZONあたりは正直「どうかなあ」という印象が拭えませんでしたが、やはりダンスはとても見映えがいい。
殺陣のシーンは足のケガを忘れてしまう程の熱演。やっぱりダンスの時の方が気になりやすいのかな。
あと、彼は去年より大分歌が上手くなりましたね。ツバサとリョウは、あの舞台の中における立ち位置が全く違います。
リョウはやはりより強くコウイチのことを「慕って」いる感じ。
ツバサは常に「競いあいたい」という気持ちが強い。
二人の一番の違いは、二幕告白シーンでの最も印象的な台詞「止まった奴は切り捨てられるんだろう?」
の解釈の違いにあるような気がします。
どちらも切り捨てられるのはイヤなんですよね。イヤなんだけど、そのイヤの種類が違う。
リョウは孤独になることが恐い。
ツバサはプライドを傷つけられ自分が自分でなくなりそうなことが恐かった。リョウはとにかくコウイチを慕っていた印象が強い分、カンパニーの太陽だったコウイチを巡る惑星のひとつのように見える。だけど、ツバサってなんとなくアウトローな感じが強いんだな。
だから、リョウはあのままオフに居続けたらずっとコウイチの側にいた気がするのに対してツバサはオフにいたとしてもいつかはコウイチと袂を分かった気がする。だからなのかも知れませんが「もう一度一緒のステージに立ちたい」とコウイチに提案する場面で、握った手の冷たさに一瞬戸惑うシーンでも、リョウはただ「本当に死んでしまっていることが哀しくてならない」印象に、ツバサは「自分が取り返しのつかないことをしてしまった事実を認識している」印象に映るのかも。
どちらが好みかは観た人の好きずきかなあ。
ただ私はリカがコウイチを刺した後の
「なんでなんだよ?」
というツバサの叫びに強い悲哀を感じました。
絶対に追いつき追い越せると思っていたコウイチに「勝った」という実感は一度も手に入れられず、最期の望み、と思って大好きなリカに託したことさえツバサはコウイチに持って行かれるのか、と思ってしまって……「そりゃあんまりだ」と。このシーン、実は今日は今回初めてリカちゃんに思うところもあり。
今回のリカちゃん、失礼とは承知で申し上げますが色気が足りないなあと思います。芝居そのものとダンスのスキルは今年のリカちゃんの方があると思いますが、色気はなあ。で、その色気が足りないが故に、コウイチに対する気持ちは「兄を慕う」という感じにより傾いているようにみえる。
実は去年よりよほど「いい雰囲気」なシーンはあるのに、なーんかこう、コウイチに相手にされてないどころか……って感じがある。
二人きりになっても絶対にそういう関係にはならないな、こりゃ。という感じ。ところが彼女はカンパニーの中で唯一コウイチの死を知りながらも、隠し続け、最後には自らそれを明かすことになるわけで。
コウイチはそれを選択した彼女に対して「ありがとう」
ととてもとても優しい声で言い、更に
「ホントに成長したなあ」
と呟くのですが。
今日はじめて「ああ、ここでリカちゃんはコウイチの前に『妹』とは違う存在として認識されたのか」と思いました。
リカちゃん、ここでようやくスタートラインに立てたのかなあ、と。
一人の独立した大人として。あるいはこの先の未来があったならコウイチの生涯のパートナーとして存在したかもしれない人として。
でも、もう二人の仲がどうなる、という未来はないのだけれども。イヤ実は。
2月中はこの「なんでなんだよ?」と「ホントに成長したなあ」の台詞が謎で謎で仕方なかったんですよ。なぜ、この台詞がここで入るんだろう?と。主要キャストが変わると、いろいろと変わってくる部分はありますね。
この方式、事前にちゃんと発表さえしてくれるなら(←ここ、重要)悪くないな、と思います。
キャストにもそして観ている側にも、新鮮な気持ちを呼び起こしてくれる気がする。
実際、楽しかったです。