■1/13(sat)■
人間誰しも、ミスはあります。
普段なんでもなく当たり前にやれていることがその一瞬だけ、悪魔が悪戯でもしたのかささいな失敗をしてしまう。
誰でもあることです。コウイチも「お前は一度もミスをしたことないのかよ?」と、トウマに諭してたじゃないですか。
でも、それが他の誰でもなくアッキーその人がやっちゃった場合。しかも、一幕のホントに最初の方だった場合、それをまんまと光一さんに見られてしまった場合。あきらめるしかないじゃないですか。
一幕「NEW HORIZON」で、上手からアキヤマ・コウイチ・トウマの三人で並んでステッキダンスを披露するあの場面ですね。
アキヤマはすかーっと見事にステッキを取り落としておりました。カラカラ転がる音が二階まで聞こえてきました。
私はこの回センター席だったんで、双眼鏡を使うのがあまりにももったない、とこの場面も肉眼で観ていたのですが、双眼鏡を使っていた友人が「なんか、光ちゃんが嬉しそうににこーっと笑ったからなんかあったのね、と思った」と言ってました。
我々には天使の、けど、あっきーにとっては悪魔の微笑みというやつですね。さて、千秋楽の楽屋場面、出てきたあっきーは「どうせネタにされるのなら」と思ったのでしょう。自ら
「いやー、俺もステッキ落としちゃったけど」
と先ほどのミスを声に出すことで御破算を狙った模様。客席からも笑いと拍手。
だがしかし、そうは問屋がおろさない。
いつものごとく、白ヘルにモップ、腰には大道具さん七つ道具を巻いたコウイチ登場。アキヤマが台詞を言っている背後で
「あ!」「お!」
とばかり、下手袖からアキヤマの側にたどり着くまでに何度もモップを床に取り落としては拾い、落としては拾い……客席大爆笑。振り向いて芝居を続けようとするあっきー。
本人目の前で台詞を続けながらも何度もモップを落としてあたふたしてみせるコウイチ。
台上に昇っても、モップをとり落とす。
「もういいだろう!!!」
とアキヤマ悲鳴。
ホントに人の悪い先輩だわ(笑)
好きな子はいじりたくてたまらない。そんな感じ。
で、二幕です。
シェイクスピアが終わって、アキヤマの劇場のバックステージ。
アキヤマはピアノで「追憶の雨」(今回のパンフレットには曲名がクレジットされていないようですが)を弾いているわけですが、ミスタッチ。
ん?
と思った瞬間に、鍵盤をばーん!と叩いて演奏をやめていた。そんな芝居初めて観たし(笑)
あ、間違ったの上手いこと誤魔化したのねー
と思いつつもシリアスな芝居は舞台上で続いていったのでした。
で、コウイチが戻ってきます。
コミカルな芝居という点ではここが最後なわけで、あとはずっとシリアスなシーンが続くSHOCKですが。
まず、白ヘルにモップがけという千秋楽の楽屋へ登場した時のあの格好(さすがに腰に七つ道具はなかったけど)で、
「なんだいねえのか?今へったくそなピアノが聞こえたと思ったんだけど……」
と。
客席爆笑。割と高確率で「ん?今のは……」と思っていた人が多かっただろう、それだけに。
で、コウイチの帰還を喜んで始まるReunionですが。
これはステッキダンス。
ので。随所でコウイチはわっかりやすくころんころんころんころん、ステッキを転がし倒しておりました。
大笑いですよ、大笑い。練習でもしたのか、これ?と思うほどに絶妙なタイミングで転がすんだよなあ、あの人。
でも、最後のキメはきっちりやってみせる。
しかし、次の台詞芝居の時には転がす。
自由自在というか、ステッキは身体の一部というか。
気の毒だな!あっきー!
けど、他の誰がステッキ落としても絶対にここまではひっぱらないから、やっぱり光ちゃんにとってアナタ特別な人なんだな、あっきー!
と、思いました。
ここまでやっても平気、というところを心得ているというか、ツーカーというか。ところで、二幕でカンパニーのところに戻ってきたコウイチを最初に見つけるのは今回、リカです。ラターニャいないから。
で、リカはコウイチがもうこの世の人ではないことを知っているから、看護士さんから形見に、ともらったらしいコウイチのネックレスを返す時に手を握ってその冷たさを確認し「やっぱり、コウイチは死んでいるんだ」と思うわけです。それでも、戻ってきたそのことがその時のリカにとっては一番重要なことでしたから、背後から抱きついて
「もうどこにも行かないで!」
と悲痛な叫びをあげるわけですが。
この週末前、平日公演に入っていた友達からのメールでみんなが口々に
「リカがものすごい体当たりしてた」
とあったんですよ。
今日も確かに体当たりしてた。タックル?というか、抱きつくときに頭からいっていた。頭突き?
死んでいても痛覚はあるコウイチが悲鳴あげていた。いや、おかしかったけど。その内抱きつかれた勢いではねとばされそうだなあ、あれ。
ぎゅっと抱きついたおかげでTシャツがめくれて「おへそが見えちゃう」と実際にご開帳状態だったおへそを押さえてるのも相当笑ったけど、あれはその……はねとばさない程度でひとつ。
ところで、松本まりかちゃんはかれこれ4人目のリカちゃんですが。
私は彼女のリカが一番すきだなあ、と思います。
まあ、確かにあのアニメ声にはびっくりした。でも、初日の一幕が終わるころにはすっかり慣れていたので、そのあたりはもう問題ないです。
まあ、確かにダンスはその、アレだと思います。特にAMERICAとSPAINがなあ……まあ、どのリカちゃんもダンスはその、割とナニだったというか「上手いなあ」と思ったことはないですけど(唯一、小宮山さんのSPAINは色気あって好きだったかなあ)その中でもかなりアレだなあ、と。
ええと、ジュリエットもその、アレですが。ジュリエットも歴代全員「これは!」と思ったのは死んだ後限定のメイサちゃんくらいだったので。
あ、でもアン王女はいい出来じゃないでしょうか?それまでのリカの声が頭にインプットされてるからよけい低い恨めしげな声とのギャップに「おお!」と思ってしまう。
だがしかし。
リカの役柄を考えた時に、私にとっては一番しっくりくる役の解釈をしてるのがまりかちゃんなのでした。
一幕が異様に幼いリカだからこそ、最後の告白のシーンで誰よりも先にコウイチの死を受け入れ乗り越え、そしてみんなに「前に進まなくてはいけない」と諭す姿に説得力が生まれるのだなあと思います。
リカがコウイチを刺す、というのが長年どうしても納得いかず、唯一あの場面だけの力技でもっていってくれた小宮山リカが一番「コウイチを刺す」という部分に頷けていたわけですが、今回のリカならばそれまでの流れで
「なぜ、すきな男を自ら失うような真似ができたのか」
という部分が理解できる。
一幕でのリカの様子がコウイチの「ありがとう……成長したな」という台詞をより際だたせているというか、あのリカが誰よりも先に前に踏み出しているからこそコウイチも「全てを受け入れるさ!」と思い切ることができたことに納得がいくというか。
台詞や演出そのものはほとんど変わってないのに今回は二幕の告白のシーンがすごくいいなあ、と思うようになったのは、やっぱりここでそれまで重ねてきたリカのキャラクターがぐん、と前に一歩踏み出して「コウイチについていくことしか知らなかった」子が逆にみんなを引っ張ったことがわかるからだろうなあ、と思います。
正直、この場面のリカが理解できないとリカって存在そのものが「いてもいなくてもいいんじゃ……」と思ってしまう感じなので。だから、今回はとっても満足。初日から一週間。
これは毎回SHOCKがよく陥ってることだと思うのですが。
一幕の楽屋裏の、あの不幸な諍いの場面ですね。あそこが、怒鳴りあいになっているのがちょっと気になりました。
というか、斗真さん、斗真さん。ちょっと怒鳴り過ぎてやしませんかね?リチャードでもずっと怒鳴ってた気がするんだけど。斗真の場合、さすがに外部舞台で鍛えてきただけあって、怒鳴っても何しても台詞がちゃんと聞こえてくるのはいいんですが、物語の牽引役ともいえる役なので、ここが怒鳴ってると周囲も自然と怒鳴るようになってしまう。
喉つぶれちゃうよ?
光一さんも大概怒鳴ってるなあと思いますが、あの人の喉は恐らく鋼鉄製にしてアタッチメントで取り替えがきくと思うので、毎回怒鳴り芝居に陥ったとして枯れたのを観たことがありませんので大丈夫。大丈夫ってわけじゃないです、もう少し搾って「ここ!」ってところで大きな声を張り上げた方がよりよくなると思います。
まりかちゃんのリカ同様、私は今回のトウマがEndless SHOCKのライバル役としては一番好きです。
ので、余計にこの怒鳴りあいはどうにかならないかなあ、と思ってしまうわけです。とりあえず今月中は一階に降りる予定がない私ですが(笑)二階のあの演出のおかげで、毎回こっちに飛んできて客席の縁に降り立つ姿を観るだけで号泣です。
ちゃんと二階の隅々を見回してから下に戻るのですよ、あの人。
飛んでくる心意気だけで泣ける。さらに客席をちゃんと全部見回してくれる気遣いに泣ける。夜の海で力尽きた光一が大桜で全員真っ白の衣装の中、たった一人紅い衣装で倒れている姿は、白い雪の上に落ちた紅い椿の花のようです。
本当に花のように散るから。
その後で雪白の衣装になってみんなを見ているところ。あれ、去年までは大桜でほんの少しではあるけどみんなと一緒に踊っていた衣装じゃないですか。
なんか観ていて「ああ、コウイチは昇天してもちゃんと次の衣装に着替えてスタンバイしようとしてたのかなあ」なんて思ってしまいました。
死出の衣がステージ衣装。
なんかとてもコウイチらしい。
そんなことを思った週末でした。