第十一話「お父さんサヨナラ」 2000/6/21 22:00〜23:00
◆あらすじ◆
輝に自分の骨髄を移植する条件として、敦は達郎に金を要求してきた。
怒りに震えながらも、輝のためにその条件を受け入れる達郎。
父親は移植のために病院に入り、輝も入院した。
入院中も達郎を顎で使う父親に憤りを覚えるものの、達郎は必死でそれに耐える。
ところが、輝の骨髄移植の前段階が終わったところで敦は病室から失踪してしまう。そして、達郎に対して以前の10倍もの報酬を要求してくるのだった。
すぐにでも父親の骨髄を移植しなくては、輝の命に関わる。
どうあっても輝を死なせたくないと願う達郎は、安原興業を訪れ「人殺し以外ならばなんでもやる」と借金を申し込む。
安原が命じた仕事は麻薬取引きの代行だった。
三億円分の麻薬と拳銃を渡された達郎は、京子に輝の身を任せて取引場所に向かう。が、水入りで取引は後日に延期されてしまう。
とりあえず安原に麻薬と拳銃を返しに行った達郎は、そこで安原興業の社員が皆殺しになっている現場に出くわす。
ひとり生き残った安原に呼び出された達郎は、実は安原が双牙会に追われる立場になってしまったこを聴かされる。しばらく外国に逃げるつもりの安原は達郎に引き続き麻薬の取引きを続けるようにもちかける。ただし、報酬は取引額の半分という莫大なものだった。
外国に行く前に息子・聖の顔を見に立ち寄った安原はだが、達郎と聖の目の前で双牙会に撃ち殺されてしまう。目の前で父親を撃ち殺されたショックに呆然とする聖は、麻薬と拳銃を抱えてその場から逃げる達郎の後についてきてしまった。
父親に死に面してもなお、素直になれない聖を一喝した達郎は、だが、輝を生かすための唯一の資金のあてを失いひとりでも麻薬の取引を行おうと取引相手に連絡をつける。
その直後、達郎は父親が交通事故に遭い瀕死の重傷を負ったとの報を受けた。
聖を置いて病院に急行する達郎は、死に瀕した父の「輝のところへ連れていけ」との言葉に救急車で輝が待つ病院へと急ぐ。
だが父は、今はの際に達郎と輝のことをずっと忘れたことはなかった、との言葉を遺し息を引き取ってしまった。◆感想◆
全編号泣。
なんちゅーかですね「白血病なんてちょっと安易ー」とか、「おいおいそりゃねーだろ」というツッコミするのは、無粋よね、と思ってしまったです。
冒頭、無菌室に入った輝に「ぐるんぱのようちえん」を読んで聴かせる内に、そらで暗記した輝と声を合わせて朗読しはじめるところで、すでにだだ泣きです。
コミュニケーションというものは、会話が成立したらイコール通じ合えてるというだけの単純なものじゃないのかもしれない。
達郎と輝は紛れもない兄弟だし、きちんと愛情を持ちあっているのがはっきりと伝わる。
達郎の目が、ものすごくいいんだな。
目は口ほどにものを言い。
悲しい目、愛おしむ目、怒る目、憤る目、驚愕する目。
その目の深さに涙が出る。
すったもんだあって、とにかく人間として芯まで腐っているとあきらめていた父親にまだ自分に対する情が残っていたと知った時の表情。
あれは、ずるいよね。
今はの際にいい人になるなんてずるい。
永久に失ったとばかり思いこんで、恐らく輝の命の代価を要求した時点で本当に決別したと思っていた父親がまだちゃんと、心を残していたなんて知ってしまって。
そしてそれを知った瞬間に、手に入れた途端に、最愛の兄・輝の命も含めてまるごと失うというのは一体どんな痛みだろう?
喪失の痛みというのは、自分の一部を切り取られることなので、それならばいっそ手に入れなかった方が幸福だったかもしれないと思ってしまう。
だけど、例えば手にしたことで得られた幸せの時間が記憶にきっちり刻まれていれば、それでも出会えてよかったと心から思えるのに。
達郎は、手に入れた途端に今度こそ本当に永久にそれを失った。
例えば安原が亡くなった聖を側においていた時、達郎の心にあったのは「それでも子供を一心に思う親をもっていた聖への羨望」だったはずで、輝の命を救う鍵でなければ父親なんていない方がいいと思っていただろうに。
「死にやがった」
この言葉の重みは血の重さと同じだと思う。
目の前で死なれて、はじめて気付く喪失。そしてそれはかけがえのない人の命の終焉に直接結びつくものでもある。
何ももっていなかった達郎が得てしまい、そしてそれを完全に失う絶望。
あまりにも、辛すぎる。
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