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◆◇◆少しは冷静な分析とかしてみよう。おう!と試みる私の「てんまち」雑記帳◆◇◆

drop16_6.gif (136 バイト) 第一話「いらない部品」 2000/4/12 22:00〜23:15 drop16_6.gif (136 バイト)

さて一晩たってみた。
ので、少しはストーリーその他についてのあれこれなんぞ。

◆煙草
実は、この煙草が一番端的に達郎の性格とか特徴を表現していたんではないかと思います。
それほどこの煙草が出てくるシーンが印象的。
だらーっとだらしなく吸ってたり、くわえ煙草してたり。達郎がいわゆる社会からドロップアウトしている人間で、さほどぎちぎちした性格ではないことが伺える。灰皿に無造作に押し消されている吸い殻とかね。
ところがこれが、輝が絡む場面になると意味合いが一変するんですね。
散々輝に振り回されてほっと一息して、寝顔を見つめながらくゆらせる煙草。青い夜明けに痛みを胸に抱えたままめくる絵本と煙草の煙。
その煙の向こう側に、断ち切りがたい「血」を感じるのは私だけでしょうか。
血縁というのは不思議なもので、自分が拒絶しても必ずついてくる。
達郎にとって断ち切りたいのは幼い頃に自分を捨てていった「父親の影」全てなのに、それでも捨てきれない「血」がある。それが、ぼろぼろになっても持ち続けていた絵本なんでしょう。
断ち切りたいと思ってもけして切れることはないし、実は達郎は断ち切りたいと心の底からは願っていないんではないかと思うわけですよ。
煙草の煙はそんな達郎の柔らかな思いであり、痛みを表現する代弁役であるような。
そんな印象を受けました。
この煙草は、光ちゃん、大成功よ。
◆「ぐるんぱのようちえん」
このドラマ最大のキーアイテム。
達郎があんなにも執拗に輝を遠ざけようとしたのは、最初はもちろん輝が「自閉症」を抱えていたから、ただそれだけだったんだと思うのですが。
実は私は、達郎の家で輝がこの絵本を熱心に見つめているのを見た瞬間から、別の思いが混じったのだと思っています。
達郎は「父親と自分をつなぐものを切り捨てたいと願っている」と、自分に言い聞かせているんじゃないかと。
だから、達郎は「輝につらくあたらなくてはいけない」と半ば自己暗示をかけているのではないでしょうか?
達郎にとって父親は「憎まなくてはいけない存在」なのかな?と思います。
でも、捨てきれない。
輝はいとも簡単にそれまで誰も気付かなかった、達郎が一番ついてほしくなかった弱点をつついたから。
だからこそ達郎は一刻も早く輝を捨ててしまいたかったんではないかな。
最初は「富士の樹海」と聴いてものすごく脅えていた輝を捨てる場面ですが、これが「粗大ゴミ置き場」だったのもものすごくポイント。
達郎にとって輝は「粗大ゴミ」でしかなかったわけですよ。そう思いたかった。ゴミの山の中で「いらなくなったもの」を拾っている輝の姿は結構キました。
捨てたのは達郎の方なのに、我関せずとばかりに行動する輝に達郎の方こそ捨てられたような錯覚さえ起こしましたもの。
あの雨の中、捨てられたのは輝だけでなく達郎も同じだったのかもしれない、と。
そして、戻ってきた輝が寝付いた後でひとり煙草をふかしながら過去に思いを馳せる達郎。
捨ててしまえばいっそ楽なものほど、捨てることができない。
人間って不思議だ。
◆自閉症
避けて通れないですね。
私は基本的にはドラマはドラマであって、ドキュメンタリーではない。と思っています。つまり、現実はちょっとそれはありえない。ということであっても、多少目を瞑るくらいのゆとりは持っていた方がいいんじゃないの?と。
リアルにこだわることは悪いとは言わないけど、それじゃフィクションをフィクションとして楽しむ心がないがしろにされちゃったりしないかい?と。
今のドラマの見方って重箱の隅をみんなでつつきまわすことが主流みたいに思えるんですよね。それは違うんじゃないかな、と。まあ、これは日記で書いたことがありますが。
でも、それを表現することを避けてはいけないことは厳密に存在していて。
そのひとつが障害を持っている方々の描写だと思っています。
現実に問題と真向かいあっている方々がいることをないがしろにすることは許されない、と。
だから、このドラマのテーマが「レインマン」であると知って、最初は正直とまどいました。
TVドラマというのは、尺が決まっていて、スポンサーもいて、視聴率というものもあって、最初から決まった枠が存在してる。そこに、全てのリアルを詰め込むのは現実として不可能で、でも、そうしなくてはいけないことで。

私は自閉症の方と接したことはありませんが、ひとつだけわかることがあるんですわ。
それは何かというと、「障害」、それも知的分野に関わる障害を持った方々に対して本当に心から受け入れの気持ちを持つことはとてつもなく困難だということ。
ものすごく冷たい言い方かもしれませんが、達郎が輝に向かって投げた言葉の数々。
「気色悪い」「いらないのはてめぇの方だ」といったののしりは、あれは紛れもないリアルだと思います。
大多数の人間と違う、ということはそれだけで多数派の人間からの排除理由になってしまうのが、悲しいかな現実だから。
でも、その拒絶から徐々に心が傾いていく様が、この物語序盤の最大テーマだと私は思っているので。
最初と最後では達郎の輝への気持ちは全く違っています。
それがはっきりわかるから、このドラマはいい、と思えるのかもしれない。
フミヤの演技がどれほど現実によりそったものなのかはわからないけれども、通じることができないのを見て感じるもどかしさ、それはもうものすごくあったので。
私は大きなマルをあげたい。
◆手の甲の謎
恐らくこれが、全編を通しての謎の核になるのでしょう。
達郎のバンデージに包まれて普段は見ることのできない、おそらくは父親との思い出につながっているのだろう、手の甲のアザ・・・いや刺青でしょうか。
ちょっと見ると漢字ではない。梵字のようにも見えます。
なんなのでしょう?
そして、達郎がそれを見るときのやるせない目も気になる。
◆望郷横町
達郎の住む、天使がいる街。
達郎はここのアイドルみたいですね。輝のためにいろいろなものをそろえていく達郎に、住人のみんなが親しげに声をかけている。
しかも、そのことごとくに対してひどく無愛想に応える達郎に対してみんなとってもフレンドシップ。
ああなるほど、この達郎なら、確かに悪い人間であるわけがない。
それなのに、友達に裏切られて借金を背負ってる。信じていた人間に裏切られるのはもういやだから、達郎は無愛想なんでしょうか?
目を開ければそこに受け入れてくれる人はたくさんいるのに、それでも達郎は孤独なのですね。

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