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・MASK'99初日
・出だしの10分だけ光ちゃん凍り付いたように緊張する
1/6(水)18:00〜(報告者:藍)
こんなに楽しみに待っていたことは近年まれなんではないか?というくらい楽しみにしていたMASK初日。
定刻より20分ほど遅れてミュージカルはスタート。
いきなりの大階段。レビューの華やかなダンサーたち。そして、中央の階段頂上から真っ白なステージ用スーツに身を包んだ堂本光一、登場。
まず驚いたのは、その顔がこちこちに緊張していたこと。東京ドーム5万人の観客を前に、ものおじした様子ひとつ見せず客をひっぱっていったあの同じ堂本光一さんが、その50分の1の観客を前に緊張している。
歌い出す。踊り出す。
踊りのキレはいい。それに、声が腹からしっかり出るようになっている。光ちゃんの歌は、相方の剛くんに比べてどーのこーの言う人がいるが、私は決してそんなことはないと思っている。複式の発声を覚えたら、もともと素直に歌い上げるタイプなだけに耳障りのいいボーカルになると思っていた。
発声。光ちゃんの歌に難があるとしたら、私はこの点だけだと思っていた。
それが、立証された気がした。
高音が甘く響く人なだけに、すとんと伸びた声はとても魅力的に耳に届く。何よりも声が前へ前へと出ている。開眼したな、と思った。
さて、光ちゃんといえば定評のあるダンス。それが、動きはきれいなものの、何かが違う。
これを見て、正直言って、私は安心した。
「ああ、この人でも緊張するんだなあ」と。
初主演舞台で、しかも劇場としての「格」は国内でトップクラスの日生劇場である。その名誉ある正月公演をいきなり任された。
緊張するなという方が無理だ。
でも、ここは、ひとつ暖かく見守ろう、と思った私こそが浅はかでした。

物語は主人公・優貴の父が、病を苦に自殺を図った葬儀の場面から一転。大人に成長した優貴が率いるロックバンド・BRUSTのライブ会場へと移る。
そして、ライブの演出という設定で、優貴がかんおけから現れ、宙づりになる。
曲のイントロ。その部分で、うなだれていた顔をあげ、きっ、と観客を睨み付ける。
その目が。
すでに、コンサートでおなじみの、観客をなぎ倒す光をもった光ちゃんのそれだった。
このことにどれだけ驚かされたか知れない。と、同時に私は「MASK」が必ず成功すると確信した。
あの目。ええ、ソロの時の光ちゃんのあの目を思い出して下さい。私が大丈夫だと、確信したのがわかっていただけるでしょう。
「MASK」〜。ロックバンドBRUSTのボーカルとして、骨太のロックナンバーが流れる。
ここでも驚いた。
かっこいいのだ。前へ、前へ。挑むようなシャウト気味の歌い方は、今までKinKiコンでは必ず「優美」さや「しなやかさ」を残したナンバーを選んできた彼だけに、新しい一面を見た思いがする。この時点で、あらかたの客がなぎ倒されたことを付け加えておきましょうか。
ここでも、声が伸びる。きれいな歌い方だと思った。

曲が終わると芝居に入る。BRUSTの楽屋での、勝哉とのいさかいの場面。
多分、大多数の光ちゃんファンが舞台にあたって最も心配していたのは光ちゃんの滑舌だと思う。私もそうだ。
あの人はしゃべり言葉の声がこもる。よって他人にはとても聞き取りにくい発音になるのだが、参ったことにこれも克服していた。
確かにマイクを通してはいる。
だが、元々の発声が悪ければマイクがあろうがなかろうが、聞こえないモノは聞こえない。
光ちゃんの発声はどうだったか。
きちんと台詞が聞こえた。大声で怒鳴るだけではない口ごもったりつぶやいたりする場面であっても、きっちりと台詞が耳に飛び込んできた。
当たり前のことだと思うかもしれないが、実はこういう、主役の元々の人気だけで前売りを売ってしまう公演では主演クラスがこれができていない場合が多分にしてある。
これは、辛い。見ていてこんなに辛いことはない。
大声の台詞だけ聞こえてきて微妙な芝居がわからなかったらサイアクである。
光ちゃんはどうだったか。舞台上の誰と比べても聴き劣りするようなことはなかった。去年の夏にやったドラマの時よりも舞台での滑舌の方がしっかりしていた。大したもんである。
この時点で、落ちついたらしい光ちゃん。
後はそういう点では見ていて非常に気が楽だった。
父親の譲司は人生に挫折して自ら命を絶ったという設定だったが、優貴はしなやかで強い意志をもって生きている。
残りわずかな命を「自分の夢」のために燃やしつくそうと懸命だ。
「おれの道はおれのものだ」ときっぱり言い放つ優貴。このあたりからそろそろかぶってくる。
なにがかというと、私の知ってるとある方と優貴の像が、である。
強い意志。たとえ母親の前でも弱音を吐かない強さと、どうしても苦しさを見せられない弱さ。
誰かを思いだしませんか?
その優貴の意志を阻むふたり。母・愛子と親友・勝哉。〜SLEEP TO THE DEATH
優貴に楽な生き方をしろ、と示唆するこの場面。私はてっきりあっきーとミエさんの見せ場だと思っていた。そしたら、でてきやがりました。主役が。
そして、見事に愛するふたりとうまくいかないのに、そこまでして自分を貫き通していいものだろうか?という優貴の葛藤の場面になっている。参った。
さて、1幕の最大の見せ場。七変化。
物語上は優貴が評判をとる舞台。という設定。すごかった。
お初・徳兵衛の死出の道行きから、平安と思しき時代へ。龍神に苦しめられていた人々を救うべく現れた神子。闘いのMASKをつけ、龍神と闘う。・・・・スペクタクル。
今回あの定番はやらなかったのだが、いやはや十分見応えのある仮面の動作とアクション。
MASKをつけたら視界はほとんどないだろうと思われる。
全てバックとの呼吸とタイミングだけに頼ったアクション。それに加えて光ちゃんは龍神と闘う演技もしなくてはならない。台上からの飛び込みもきれいな姿勢で、キャッチする人々の腕に落ちていく。見事。闘いに勝利して、MASKをはいだ瞬間にはじまる「どうなってもいい」はドームより更に完璧。
そしてなかなか面白い演出の早変わりの着せ替えへ。舞台の下手の方で、優貴が早替えの衣装を着せつけられているところをそのまんま客に見せるというもの。
ここまで主役出ずっぱり。ちょっともたついたところはあったものの、うまいつなぎだと思った。
場面は雪の野で舞う女の情景へ。そこから、一転。八百屋お七。
例のやぐらの場面では思い切り身体をのけぞらす。まだちょっと型どおりな感じはしたが、きっとおいおいよくなっていくのだろう。
上からつり下げられた半鐘がお七の身体をすっぽり覆ったかと思うと、一転、地に落ちる。
と、舞台は急転。天守物語へ。まさか泉鏡花が出てくるなんて。びっくり。いや、驚いたのなんのって、光ちゃんの殺陣!ちゃんとしてるんですわ。動作がきちんと流れている。
いつのまに殺陣なんて。いつのまに殺陣なんて。いつのまに殺陣なんてーーーー!
またこの若侍姿がたまらん。すてきだ。それしか言えない。
呆然と口を開けたままで、一幕終了。
幕間の友人との会話は「どうしよう」「すてきよ、光ちゃん」「あそこにいるのはどこの堂本光一さん?」こればっかり。

二幕。単身NYに飛んだ優貴がセントラルパークにたたずむシーンから。
ここから先は全てが見せ場。
尾藤さんとの出会いからレビュー三連発。圧倒的なミュージカルショーはすさまじい。私は群舞がすきだ。大好きだ。
群舞の中で抜きんでて光ることができなければ主役の資格はない、と思っている。
ここでも光ちゃんは期待にちゃんと応えてくれた。
ダンサーの中に混じると彼は小柄だ。
だけど、光ちゃんがちっとも小さく見えない。これは最初から見続けて思ったのだが、だんだん光ちゃんがでかくみえてくるのだ。
光ちゃんには華がある。これは間違いなく舞台の上の誰よりも勝っている。違う服を着ているから、とか。私が彼のファンだからとか。それとは全く次元の違うところで輝くような華をもっている。
光ちゃんは間違いなく、ステージの申し子だと思った。
さて、物語はすすみ、勝哉がNYに訪ねてくるシーン。このあたりではもう、完全なヨユウをもっているのが、すごい。
勝哉との楽屋での別れ際のやりとりは完全なアドリブである。ものすごい。舞台経験だけで言えば、あっキーの方がより経験豊かなわけであるが・・・・・・光ちゃんという人は時々予測もつかないことを、すらりとやってのける。
舞台向きだな、と心から思った。
ここからまたレビューシーン。何度も言うが、私は群舞がだいすきだー!
少年隊のもVのもたっきーのも、とにかく「MASK」は一度も観たことのない私だったので、「このリリー・ガーランドって誰?」と思っていたのだが、なるほどなるほど。私はこの女優さんすきである。レビューの時の華やかさと高飛車な女をコミカルに演じていてイヤミがなくていい感じである。
さて、いよいよ、2部最大の見せ場(と私が思っている)親子3人の場面。
かわいい息子だ。こんな息子がいたら、違う意味で人生が狂ってるぞ、私は。
優貴が「母さん」「父さん」と呼ぶときの声がすきだ。
心から慕っていることが、どんな台詞よりも雄弁に物語っている。このあたり、重なってる重なってる。
そして、レビュー。もう、これは圧巻だろう。
帽子やステッキ、イスといった小道具を巧みに用いた、楽しくて華やかなショー。
特に、ステッキ裁きについては、驚いた。あんなダンスはジャニーズにはない要素だから、光ちゃんも初体験のはずである。それが見事に使いこなしている。
目から鱗。ホントにミュージカルスターだよ、光ちゃん。
ラストシーンも印象的である。
優貴は常に未来へ進んでいくキャラだった。死病に冒されてもなお、前へ進むために必死になっている人だった。
その優貴に相応しいラストだったと思う。絶望ではなく、自ら切り開くための未来。
奇跡はおきるものではなく、おこすもの。
そう言って「これが、僕のMASKです」と締めるのは、どうしても優貴と重なって仕方なかった光ちゃんらしいラストだった。
真実はわからないが、私はかなり光ちゃん自身が脚本に口を出していると見ている。それほど、「光一MASK」は普段から光ちゃんが口にしているエンターテイメント哲学がふんだんに盛り込まれていた。
どうしたらお客さんが喜んでくれるのか?
お客さんが喜んでくるならピエロだっていいじゃないか。
ラストは夢オチにせず、現実と真向かっていく。
MASKほど、色の違う様々な要素が取り込まれたミュージカルはそうはないし、主役を目当てで来る客が大半の公演で、実に3時間に及ぶ物語の90%以上に主役が登場する、しかも見せ場の全てにからんでくるミュージカルなんて私は見たことがない。
いろんな嗜好のお客さんのシュミの必ずどれかにヒットする部分を持ち、「堂本光一」を観に来る客を喜ばせるために、光ちゃんは努力を惜しまない。
実は、初日の公演の後で「あんなに出ずっぱりでは光ちゃんがかわいそうだ」と言って泣いている女の子を見かけたのだが、それこそ光ちゃんに失礼なのではないかと、思う。
自分の持てる力を全て出し切って「客を楽しませる」ことに徹してくれた光ちゃんのために観客ができることといえば、惜しみない拍手以外にない。
MASKには、光ちゃんのこれまでが濃密に詰め込まれている。
いい作品だと、心から思う。
光ちゃんのファンであることを誇りに思った。