◆ストーリー◆

==1幕==

コウイチは亡き兄の遺志を継いで、義姉サキホ、義弟ツバサ、マネージャーのタクらと共にカンパニーを率いる花形スター。
今夜も危うい事故が起きたものの、大成功の内に千秋楽の幕が降りた。
翌日からはじまった全国ツアー。順調で、だがいささか新鮮な刺激に欠ける旅の毎日にコウイチたちはマネージャーのタクに頼んでバイクでの移動を試みる。
「なにか嫌な予感がする」
と後込みするツバサを無理矢理誘ったコウイチは、その途上でツバサと共にバイクごと谷底へ落下する大事故を起こしてしまう。
奇跡的にも大したケガもなく済んだコウイチに引き換え、ツバサの容態は深刻で歩けなくなるほどの大怪我を負ってしまった。
コウイチはツバサに対する罪の呵責にさいなまれ、いつかツバサが帰ってくるその日のために舞台を守り続けていくことを誓う。
ツバサのためにも幕を開ける。
そう宣言したコウイチは鬼気迫る舞台「ジャパネスク」で大絶賛を浴びた。おまけにN.Y.のエージェントから招聘の話までが舞い込んできたのだ。
ツバサをひとり東京に置いてN.Yに旅立つことに難色を示すサキホ。
結局N.Y行きの船に、サキホと夫であるタクの姿はなかった。
コウイチの後についてきたものの、自分たちの選択に今ひとつ自信のないカンパニーのメンバーたち。そんな中でもジュンは本当はツバサのために東京に残りたい、という気持ちをあえて押さえ、コウイチを信じたいと思っていた。
コウイチがツバサのケガに対する深い自責の念を抱いていることは誰もが気付いていた。

N.Yへ向かう船の中、コウイチは夢をみる。
夢の中でコウイチは「白鯨」のエイハブ船長となり、白鯨を追い続けることに迷っていた。カンパニーのメンバーの姿を映した船員達はみな、鬼気迫る自分に怯え、逃げだそうとしている人間もいた。
惑いの果て、白鯨と遭遇したエイハブは迷いを捨て敢然と闘いを挑んでいくことを選んだ。
だが、その結果はイシュメルを除いた船員たち全員の死。

目覚めると、そこはN.Yだった。

==2幕==

13年前。N.Y。
コウイチの亡き兄はサキホやタクと共に無事ブロードウェイ公演の初日を迎えていた。自信を得るに足る観客の反応に満足したはずが、ふたを開ければ散々な劇評。
そして、絶望して兄は自ら命を絶った。

そのブロードウェイにコウイチたちはいた。慣れぬ英語に戸惑っているところに世話役のばあさんと今度の舞台で共演することになったボーイ・キュートに出会う。
彼らこそ、結局コウイチの身を案じて変そうしてまでN.Yにやってきたサキホとタクであった。
ボーイ・キュートを得てはじまったブロードウェイ公演。
その初日の楽屋に「新しいヒーローの誕生」だと、プレス達が押し寄せる。N.Yでの成功をコウイチたちが確信したのもつかの間、舞台で使用した亡き兄の楽曲の権利を主張するエージェントが現れる。たまたま、兄の肖像画の裏に曲の権利書があることに気付いていたコウイチの機転により、奇妙な訪問者をやり過ごすことができたのだった。
正真正銘の成功に酔いしれるカンパニーの面々。
その興奮も収まった夜、コウイチに対する疑念を抱いたジュンから突然の帰国を聞かされる。最初からツバサに心を残して渡米したジュンはやはりツバサをひとりにはしておけない、一緒に日本に帰ろうとコウイチに告げる。
ジュンの帰国の誘いをにべもなく断るコウイチ。
コウイチの態度を無情と誤解したジュンにコウイチははじめて胸の内の苦悩を吐き出すのだった。
そんな折り、日本の病院からツバサがひとりいなくなったことをふたりは知る。誰もが心配する中ひとり「よかった」とつぶやくコウイチに、一座の反感が高まる。
当のツバサはひとり、願い事を叶えてくれると言う幻の白い鯨の現れる入り江にやってきていた。
そこで、ツバサは亡くなったはずの義兄の姿を見る。
すっかり歩く自信をなくしたツバサを叱咤する義兄にツバサは殴りかかろうとし、自分が既に歩けるようになっていたことを知る。
ツバサはN.Yへ飛んだ。
N.Y、インペリアルガーデンシアター。
ケガを治したツバサのダンスに合わせてカンパニーの面々が集まってくる。ようやく面々が揃ったカンパニー。コウイチはツバサが病院から失踪したとの報にむしろ「足が治ったに違いない」という思いを抱いていたことを語る。カンパニーのコウイチに対する誤解も解け、再びカンパニーは生き生きと躍動し始める。
ところがそんな時もつかの間、ジュン、ツバサ、サキホ、タクは突然コウイチに呼び出しを受ける。
みんなを集めたコウイチは「一連の事件の犯人が誰だかわかった」と宣言するのだった。
一連の事件、コウイチの兄の死、公演中の落下事故、そしてツバサのケガ、著作権騒動。
全ては、タクが黒幕だったのだ。
証拠をつきつけられたタクはその本性である、悪霊の姿を全員の前に現す。
最後の対決。
タクは我が子リョウもまた、悪魔の子であると高らかに宣言し哄笑を響かせる。高所でコウイチともみあった挙げ句コウイチは奈落の底へと落下。そのことにショックを受けたリョウの手によりタクは撃ち殺されてしまう。
果たして、コウイチは亡兄の力でからくも無傷のまま帰還する。
そこには父を自らの手で殺し、また悪霊の子であることを知らされ傷ついたリョウがいた。コウイチはリョウに「お前は人間だ」と優しく伝えるのだった。
これで全てが終わった。
今まで影でコウイチ達を助けてくれていた兄は思い残すこともなく天へと帰り、コウイチたちはまた新たなショーの幕を開ける。
今度は、東京で。

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