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第6楽章「失われる夢」
あらすじ

一度は心臓が止まったものの、由希は奇跡的に
一命をとりとめる。だが、彼女は既に「ただ生きている」
だけになってしまった。
深谷に責められ、二度と由希に近づかないように言い渡される
秀行。
失意のうちに家路につくと、今度は保子がピアニストとして再起
不能であることに絶望し自殺を図る。
なんとかそれをくい止めたものの、精神的に不安定な保子の身を
案じて、秀行は自分の家に住まわせることにした。
一方彼の弟・健志もまた心臓の手術を控え入院を余儀なくされていた。
弟の手術費用、そして山岡親子への贖罪の気持ちから大学を辞めて
働く決心をした秀行は、山岡の計らいで町の交響楽団の補欠団員となる。
健志の入院の日、大学への退学届けを出す秀行だが、由希への思いは
相変わらず消せずにいた。
神経が焼き切れてしまった由希は日常生活の全てを捨てて、脳の
音楽領域を驚異的に発達させることにより、単なるチェロを弾くだけ
の機械になろうとしていた。
街角で由希の公演が予定通り開催されることを知った秀行は由希に会いたい
一心で会場までやってくる。
深谷になんとか面通りを許されたものの、もはや由希は秀行の呼びかけにも
一切反応を示さない。
何度も由希を呼ぶ秀行に深谷は「由希は、あなたがすきなのよ」と告げる。
はじめて由希の思いに気づいた秀行は、呆然とするしかなかった。
由希の公演は成功に終わる。だが、由希は見知らぬ男に誘拐されてしまう。
時を同じくして、健志も心臓の発作に襲われ病院に担ぎこまれるのだった。


なんともはや、すごい展開です。
タイトルの通り、今回は秀行が何もかもを失っていく序曲となる回でした。
由希との日々を失い、音楽家としての夢を失い、恋人を失い、そして家族をも失う。
もはや、秀行の心は保子にないと誰もがわかっているのに、それでも秀行をつなぎとめたい保子の必死さと、山岡のやるせなさ。そうやって保子が秀行に執着すればするほど、彼には重荷にしかならず、どんどん心が冷めていく。
弟は弟で、兄の状況、それにも増して自分が兄の夢を奪ってしまうことに耐えられず半ば自殺といっていい行動に出てしまう。
秀行という人間自体は普通の男性なのに、周囲の人間が彼をがんじがらめにして不幸に導いていく。そんな気がしますね。
救われないのは、その不幸へ導く誰も彼もが秀行を愛しているということでしょうか。

保子は唯一自身を持っていたピアノを奪われ「恋人」という立場を無駄とわかっていても必死になって守ろうとする。作った料理を捨ててしまう場面は哀れでした。そして、秀行はそんな彼女の行動のひとつひとつが重くなっていく。
とっても下世話なことですが、幾夜も同じ部屋で寝泊まりしても、秀行は保子に指一本触れなかったはずです。それができたら保子は簡単に秀行をあきらめられたでしょうし、秀行もあんなに由希にだけ向かったりはしなかったでしょう。山岡にだって「保子と結婚させてくれ」と言えただろうに。
それができないから、秀行は不幸になるしかなかったんですね。
健志は兄が大すきですよね。自分の代わりに夢を追えるだけの健康な身体をもった兄に自分の果たせない夢を託してるのでしょう。でも、自分の身体のせいで兄が夢をあきらめなくてはいけないことに、耐えられなかった。入院前の冷蔵庫チェックと最後に秀行に振り返って唇を噛みしめた場面が切ないです。
秀行の何もかもを自分に引き受けて、全てを背負っていこうとするその姿。
それが、どうにもこうにも、私は切なくてたまりません。もっと楽に生きられるのにと思います。

そんな一番身近なふたりの存在こそが、秀行に重くのしかかって、結局は由希への思いに拍車がかかってしまう。
どうしても由希との思い出の石が捨てられない場面の切なさがたまらないです。
日々に追われて、家もそして職業として弾くチェロにも喜びも安らぎも見いだせない。たったひとり狂ったように思う相手(そしてこれがまた「あいしてる」ということを未だに自覚していないあたり・・・)には会うことも叶わず。
そうして、ようやく再開した由希はもはや自分に反応しなくなっている。
由希がチェロを弾く機械になったことを聴かされた秀行が
「そんなのやだ!」と泣き叫ぶ場面が胸に迫りました。
そして「由希が秀行をすきだ」と聴かされた時の秀行の表情。
多分ですね。「あいしてる」とか「あいしてない」とかそういう自覚も思いも持たずに秀行は由希に向かっていたんだと思います。
そして深谷に由希の気持ちを言葉で知らされた瞬間、秀行もまた「自分が由希を愛していること」を自覚してしまったんでしょう。
そうして気づくんですよ。自分が愛する人をどんな境遇に追いやったのか。
呆然としたまま警備員に連れ出される秀行が泣けました。
次回は、多分今週よりももっと不幸です。
SFXのシーンをひとつも出さずに描ききったこの回。私は今までで最大の評価を与えたいと思いました。


第7楽章「君が 呼んだ」
あらすじ

健志の心臓の手術はひとまず成功する。半ば自殺に近い
健志の行動に憤りを感じる秀行。
そんなとき、TVのニュースで由希が何者かに拉致されたことを
知った秀行は一度は病床の健志のために残ろうとする。
だが、由希は秀行に向かって必死に「SOS」のメッセージを
送り続けていた。
健志の病室にて「最初の発作の時に何もできなかった」ことを
わびる秀行。健志はそんな秀行に今まで一度も秀行が勝ったことの
ない「オセロ」で兄が勝ったなら許してやる、と申し入れる。
とつとつと語り合いながらオセロをつづけるふたり。
だが、そんなときまたもや秀行の頭の中に由希からの「SOS」の
メッセージが送り込まれる。
いてもたってもいられなくなった秀行は保子の制止もふりきり、
健志に自分が戻ってくるまで勝負を待つことを約束して由希の
救助に向かう。
なんとか由希の元へたどりついた秀行は、由希をルー・メイの身代わりに
しようとしていた犯人と格闘する。
由希は再び、秀行を傷つける犯人に対して、特殊能力を爆発させた。
犯人は由希によって墜落死してしまう。
なおも荒れ狂う由希を必死で制止する秀行。やがて、由希はルー・メイで
なく「由希の音」を弾き出したかと思うと、能力の解放をやめた。
秀行は由希のやつれた頬に手をあてがい
「おれは、お前がすきなのか?」
と問いただす。だが、由希は涙を流すだけで何も答えなかった。
由希を深谷に預け、病院まで戻ってきた秀行はそこで健志が屋上から
飛び降り自殺をしたことをしる。
「兄を自由にしてやりたい」と書き遺した健志からの手紙を見て、秀行は
慟哭する。


大泣きしました。どうしてこう、この不器用な兄弟は(T^T)
第7話。いよいよ、秀行は自分を日常につないでいた鎖、あるいは未練というものの全てを失ってしまったんですね。
もう、彼には何一つ残っていない。
由希しか残ってないんですね。
「由希」が呼ばなければ病床の健志をおいて秀行が飛び出すことは決してなかったでしょう。
タイトルの「君が 呼んだ」がなんとも悲しいです。
誰でもない「君」が「呼んだ」から秀行は飛び出していったんですね。
由希を助けてから頬に手をあてがい
「おれは、お前がすきなのか?」
と問いかける場面は、ずしり、ときました。
それまで何もかもを捨てて走ってしまうほどに激しい心の嵐を秀行は恐らく知らなかったのでしょう。
由希がまっすぐこちらに向かってきているのはわかっていても、自分の中にある見知らぬ激しさに戸惑って、自分がわからなくなってしまうのは無理ないことです。
そして、由希を助け出すことはできたものの、代償というにはあまりにも重い「健志」を失ってしまう。
私は基本的に「自殺」オチは大嫌いです。
死んで何かが解決するなんてことは、絶対にないと思いますし、違う、と言い切れます。
が、今回はもう、だめでした。
たんたんと読み上げられる、健志からの手紙。とっくに兄を許していると告げる、真っ白なコマで埋め尽くされたオセロ盤。
あのオセロ盤は全てのことを語っていますよね。
兄をもちろん許していること、愛していること、だからこそ自分から解放してあげるのだという揺るぎない意志。
死を直前にしたとは思えない、さらりとした、そう。兄のこれからの食事の心配をしてしまうような手紙が、たまらなかったです。
第6話での入院前の冷蔵庫チェックは単に備蓄食糧のチェックだけではなく、兄のために密かに作った好物の所在の確認だったんですね。だんだん、冷蔵庫がUPになってきて、健志の最後の兄貴孝行の料理の皿が冷たく、しんとして映っているのが悲しくて。
大泣きです。
やっぱり「ハルモニア」はすごいです。毎週こんなにすごいものを見せられるなんて。まだ思い出すと涙が出てしまいそう。
来週はどうなるんでしょう?原作読んでるのに、さっぱりわからなくなりました。楽しみすぎる。


第8楽章「君が生きるために」
あらすじ

健志が死に、意気消沈する秀行の元に、由希奪還の
礼を言いに深谷が訪ねてきた。
一緒に訪れた泉の里で、ふたりは刑事から由希の特殊な
能力についての質問と共に、由希監禁時のビデオを見せられた。
秀行はそこで、由希がビデオのモニターに映った自分の演奏する
姿をはじめて見て、今までルー・メイ=自分と思っていた由希が
彼女とは同一の存在でないことに気づいたと看破した。
うまくいけばルー・メイを外せるかもしれないと、光明を見いだすが
深谷には反対される。
どころか、中澤は由希の特殊能力の領域を切除して、由希を感情を
一切持たない人間に変えてしまうことを主張した。
反対する深谷と秀行に、中澤は自らの命を賭して、由希の能力の
秘密を解明し、由希は手術をしなければ衰弱死の道しかないことを
示唆する。これには、さすがの深谷も秀行も折れざるをえない。
傷心の秀行は、山岡から誘われていたNY行きを決意し、由希に
「すきだ」とはじめて告げる。
NY行きの日、その日は由希の手術の日でもあった。
秀行は出かける直前、健志の遺影に
「自分が思う通りのことをする」
と告白すると、泉の里から由希を連れだしてしまう。
一度は共に死を決意した秀行だが、由希が断崖で見せた「海」の
イメージに、まだ由希が「自分の音」を退きたがっていることを知る。
最後に由希に「自分の音」を弾かせてやりたい。
そう願った秀行は、由希を日本クラシック大賞のステージに立たせるべく
柏木に連絡を取る。
深谷から由希の引退を申し渡されていた柏木は秀行の話に乗り、
ふたりの逃亡の手助けをする。
そして、秀行は由希が監禁された廃屋の前に由希とふたりで立っていた。


私の涙腺はどうも、壊れてしまったようで(T^T)
秀行がようやく由希を愛していることに気がつき、縛られていた全ての呪縛から解き放たれて由希のためだけに生きる、そんな回でした。
「すきだ」の一言がこんなに重いドラマというのも久しぶりな気がします。
いろんな人を犠牲にして、たくさん傷ついて、そうしてようやく秀行がたどり着いた言葉だからこんなに重いのでしょうね。
「おれ、お前がいなくなることに耐えられるのかな?」
が、もうどうしようもなく響きました。
失う時になってようやく気がつくということは確かに存在します。
健志の遺影に向かって「(NYに行くことを決めたけど)これでいいんだよな?」語りかける場面からうるうるしてまして、「すきだ」と告げたあたりでは、大変なことになってました。
秀行はかけがえのないものを失ってばかりいるんですね。
近い内に、必ず、確実に失うことがわかっている人への愛の告白というのにずきずきしてしまいました。
由希が反応しなければ、といっそ願ったくらいで。
弟を失ったばかりで、今度は最愛の女性を失う。しかも自分はそれを手をこまねいて見ているしかない。
ドラマなんだけど、ドラマなのはわかってるんだけど、そんなことってあっていいのか?
由希が微かに笑ったのを見て、最後の決断をしたんであろう秀行が、健志の遺影に向かって「思う通りに生きることにするよ」と告げる顔がとても晴れやかで、いっそ悲しかったです。
運命の恋。
旅館で口移しで水を飲ませるシーンは、さすがにクるものがありましたけど。でも、きれいでした。
あと一回。予告を見ると・・・まさか?という気がしますが。
静かに最後を見守りたいと思います。


最終楽章「そして、海へ・・・」
あらすじ

由希からルー・メイを抜くため、秀行は再び由希が監禁
されていた廃屋にやってくる。そこで、もう一度「由希」と
「ルー・メイ」は別個の存在であることを由希に認識させる。
一方由希の身を案じる深谷はふたりの居場所をカンで
つきとめ、廃屋でルー・メイが抜けきった瞬間に出くわす。
衰弱の激しい由希を見て、秀行を責める深谷。
取り戻そうとする深谷と後をつけてきた刑事にナイフをつき
つけ、秀行は追っ手を振りきって逃走する。
深谷は仕方なく秀行が由希を誘拐したと認め、警察に捜査を
委ねることになってしまった。
ふとしたことから、ふたりの行く先が日本クラシック大賞のステージ
だと判明した警察は会場に包囲網をしいた。
警察に囲まれてもなお、会場へ向かおうとする秀行に先走った警官が
発砲してしまう。足を撃たれても「由希の願いを叶えてやりたいから」と
這いずって彼女を求める秀行。感情のないはずの由希までも
その手を求める様に、誰一人立ち入ることが敵わない。
そんなふたりの様子を見て深谷は「誘拐は自分の勘違いであり、
由希は自分の意志で秀行についていった」と、警察を引き下がらせる。
由希の最期のステージのために、深谷は危険を承知で中枢神経興奮剤を
投与する。そして、愛する者を失いたくなかったと告白した。
由希と秀行はふたりでステージに立つ。そして、決して人と合わせることの
できなかった由希と協奏曲を奏でる。ルー・メイではない由希の音に
ざわつく観客。そして、由希は静かに「由希の音」でチェロを奏で・・・その場で
昏倒した。
すでに由希の生命を救う手だてはない。
秀行は由希と共に再び姿を消そうとする。
未だ秀行を忘れることのできない保子は、そんな秀行に「私から秀行を奪った
由希の前で秀行を奪う」とナイフをつきつける。ようやく秀行は保子に
はっきりと「(由希が)すきだ。おれには由希しかいない」と、告げ保子を
解放した。
全てのことから解き放たれたふたりは、由希が見せたあの海へ行く。
日に日に衰弱していく由希を見守りながら、秀行は最期の時間をひっそりとすごす。
ある日、海を見ながら由希に語りかけた秀行にはじめて由希が応えた瞬間。
由希の命は果てた。
由希を荼毘にふし、チェロを焼き、その灰をケースにつめて海へかえす秀行。
何もかもを、失って海辺で由希のくれた石の音に耳を傾けているとき、ひとりの
少女が秀行に尋ねた。
「何の音を聴いてるの?」
黙って石を渡し、それを耳にあてた少女が満足げな笑みをもらすと、秀行は、静かに微笑んだ。


夏と共に「ハルモニア」が終わりました。今回は長いですよ、覚悟して下さい(笑)
近年稀に見る、本当に質の高い、よいドラマだったと思います。
ラストシーンの秀行の微笑は確かに未来を感じさせ、由希もなにもかもを失ってしまった秀行が、必ずまた歩き出すんだろうという救いをくれました。
秀行が19歳であったこと。
この意味が、最後で最大限に生かされていたと思います。
由希は死にました。秀行はあらゆる意味で全てをなくしました。
何もかもなくしたように見えても、残るものは必ずあって、そのために生きて生きて生きることができた人はあんな風に微笑むことができるんですね。
由希と秀行のふたりの愛情は、強すぎて周囲をぼろぼろにしてしまったけれども、それでも引き合わずにいられなかった心は、性愛という形をとるよりも遙かにしっかりと交わったんだな、と。
「愛のあいさつ」を奏でるふたりの姿を見ていて思いました。
究極ですね。
セックスというまあ、わかりやすい手段を使わずにここまで交りあう心を描けたのは「ハルモニア」がはじめてではないでしょうか?
由希と秀行は通常のドラマでいうところの「キスシーン」というのはないんですよ。
口移しのシーンは愛情表現という意味合いが皆無とは言いませんが、命をつなぐための非常手段なんですよね。
肉体的な交わりよりも遙かに強固で、ある意味エロティック。
そういう結びつきでした。
場面的にもツボが多すぎて困ってしまいますね。
秀行が警察の張った立入禁止のロープをナイフで断ち切りながら、廃屋へ行く場面。
だってですね、秀行がですよ?チェロを一生の仕事として生きていこうとホンの少し前まで心に決めていた秀行がですよ?ひとりの女性のためにナイフを手に進んでいくんですよ?
そこに1話でのちゃぶ台を囲んで団らんする秀行の面影はありませんでした。深谷や刑事にナイフをつきつけたりするところも、悲壮なまでの決意があふれていて大変。
秀行は由希を愛してるんです。愛している人を失いたくないのは当たり前なんです。でも、由希の望みを叶えようと思うならば、由希に待っているのは死しかないんですよ。最後まで「生きていたい」と由希が願っていると確信している秀行だからこそ、早く訪れる由希の死を覚悟で、自分の身体を賭して「生かそう」としている。
秀行が足を撃たれてなお、由希の手を求める場面。
撃たれる前から叫び続け、撃たれてからも由希の手を求めて地面を這うところなんて、目を閉じるのはもったいないから目を開けたままぽろぽろ涙流してました。
そしてそして、日本クラシック大賞のステージは、もう(T^T)
言うに及ばず。
海にたどりついてからの場面はもーーーー(T^T)
ドラマ史上に残る名シーンです。
由希の死の瞬間の秀行の涙のきれいなこと(T^T) はらはらっと音がきこえてきそうなきれいな、きれいな涙でした。
由希の灰を海にかえして波打ち際に倒れ込む秀行。
そして、そして、最後の笑顔!!!!
あんなすごい終わり方をするドラマを見たことはないし、あんなきれいな映像をTVドラマで見せてもらったことはないです。
ありがとう。「ハルモニア」関係者のみなさま。


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